妻が、SNSか何かの情報で、「パパが育児に参加すると、長生きする」「仕事の効率が上がる」というような話を見かけたらしい。本当にそうなのか、そうだとしたらなぜそうなるのか、チャッピーに聞いてみた。
チャッピーに聞いてみた
「育児すると長生き」は言い過ぎ、でも関連はある
「父親が育児に関わると必ず長生きする」とまでは言えないが、父親の育児参加や育休と、健康・死亡率にプラスの関連を示す研究は実際にあるらしい。
スウェーデンで、1988〜89年に子どもが生まれた父親7万2千人超を長期追跡した研究では、父親が育休を30〜135日取得していたことが、その後の全死因の死亡リスクの低さと関連していたとのこと。別のスウェーデンの大規模研究でも、子どもがいる男女は、いない男女より高齢期の死亡率が低かったとのこと。60歳の時点で、その後生きられる年数が平均で、子どもがいる男性の方が約2年長かった(女性は約1.5年)らしい。ただし、こちらは「子どもがいるかどうか」の比較で、育児にどれだけ関わったかを比べた研究ではない。
ただし、ここには重要な注意点があるとのこと。「父親になった」「育休を取った」「実際に日常的に育児した」はそれぞれ別物で、育休を取れる父親はもともと勤務環境や家庭関係、健康意識が良い可能性があり、そうした違いを完全には取り除けないらしい。チャッピーは米国の研究も挙げていたけれど、該当する研究は見つからなかったので、ここでは紹介しない。
なので、「育児参加→寿命が○年伸びる」という単純な理解はしない方がいいらしい。一方で、「育児に関わる生活には、男性の長期健康にプラスになり得る要素がある」というところまでは十分ありそうとのこと。考えられている理由はこちら。
- 家族とのつながりや社会的支援が増える
- 「自分を必要としている存在がいる」という役割・意味を持つ
- 家族を意識して危険行動や過度な飲酒などを減らす可能性
- 仕事一辺倒から生活全体を見直す
- 育児や外遊びなどで日常的な身体活動が増える
ただし、これらは「本当にそれが理由」と証明されたわけではなく、あくまで可能性の話とのこと。チャッピーの説明で、ここも個別の資料は見つからなかった。
「仕事の効率が上がる」は、はっきりした根拠は見つからなかった
チャッピーは、日本で育休を取った父親を調べた研究や、労働政策研究・研修機構(JILPT)、厚生労働省の調査を挙げて、「育休後に段取りや時間管理が良くなったと感じる人がいる」という話をしていた。でも、調べても、その内容がそのまま書かれた資料は確認できなかった。なので、ここは「そう感じる人もいるらしい」くらいに考えておく。
近い資料としては、JILPTのフォーラムでの山口慎太郎教授の報告に、企業の人事担当者へのアンケートが載っていた。男性の育休取得を進めた影響として、「職場風土の改善」が56.0%、「従業員満足度・ワークエンゲージメントの向上」が45.9%。「生産性」や「効率化」の項目は、見当たらなかった。
なぜ効率が上がるのか、という理由は、かなり直感的とのこと。子どもがいなければ「今日終わらなかったら18時以降やればいい」で済むが、「17時半にはお迎えに行かないと」となると、その時間内で絶対に終わらせる必要が出てくる。結果、「今日絶対やる3つは何か」「この会議、本当に1時間必要?」といった思考が強くなるらしい。育児で鍛えられやすいのは、単なるマルチタスク能力というより、優先順位づけ・時間制約下での意思決定・段取り・突発事態への対応、あたりとのこと。これは研究の結果ではなく、チャッピーの考え方の説明。
2026年に発表された研究(大学などの研究職の人が対象)では、親になること自体が実際の成果(論文の数など)を上げる、というはっきりした結果は出なかったとのこと。ただ、「親であることが仕事上プラスになる」と考える人は、集中力・効率・自己成長を挙げていたらしい。逆に、育児の負担が夫婦の一方に偏るほど、そのぶん多く担う人は「生産性が落ちた」と感じやすかったとのこと。研究職という特定の仕事の人たちの結果なので、そのまま一般の会社員に当てはめるのは難しい。
大事なのは「上乗せ」ではなく「組み替え」
育児は負荷を足せば足すほど仕事にも健康にも良いわけではないらしい。仕事8時間+残業3時間+育児4時間+夜泣き対応、のように単純に負荷を上乗せしたら、睡眠不足と疲労で仕事の効率が落ちる可能性の方が高いとのこと。これはチャッピーの考え方で、この数字を調べた研究があるわけではない。
仕事と家庭が互いに足を引っ張り合う状態(仕事と家庭の葛藤)については、研究をまとめた分析がある。仕事の満足度、燃え尽き、夫婦関係の満足度、抑うつなど、仕事・家庭・心身の悪い結果と、一貫して関連していたとのこと。
なので、「育児を仕事に上乗せする」のではなく、育児という役割ができることで、仕事との時間配分や価値観を組み替えるところにメリットがあると考えるのが近いらしい。例えば「仕事10→育児5を追加して15にする」のではなく、「仕事10だった生活を、仕事7+育児3へ再設計する」ことで、仕事7の中で「本当に必要なことは何か」を考えるようになり、その過程で効率化が起こる、というイメージとのこと。
まとめ
「育児すれば必ず長生き・生産性アップ」という単純な話ではなく、育児を機に生活や仕事の組み立て方を見直すことで、結果的にプラスの効果が生まれやすい、というのが実態に近そうだと分かった。ただ、長生きについては、育休や子どもがいることとの関連を示す研究があるところまで。仕事の効率については、はっきりした根拠は見つからなかった。
ちなみに、上の子の時にも育休を取って復帰も経験したが、正直、仕事の効率が上がったとは感じなかった。研究でも「感じ方には個人差がある」ということなので、実感が薄かったのも、そういうことなのかもしれない。
ここに書いたのは、チャッピーの回答と、うちの場合の話。子どもの様子や家庭の状況は、それぞれ違うと思うので、あくまで参考のひとつとして読んでもらえたらうれしい。
参考にした資料
- Månsdotter & Lundin(2010)How do masculinity, paternity leave, and mortality associate? A study of fathers in the Swedish parental & child cohort of 1988/89(Social Science & Medicine)
- Modig et al.(2017)Payback time? Influence of having children on mortality in old age(Journal of Epidemiology & Community Health)
- Ruberto et al.(2026)Parenthood and care in academia: Publication counts, self-assessed productivity, and gendered differences(PLOS ONE)
- Amstad et al.(2011)A Meta-Analysis of Work-Family Conflict and Various Outcomes(Journal of Occupational Health Psychology)
- JILPT 労働政策フォーラム 研究報告2「仕事と育児の両立支援がもたらす三方よしの効果」(山口慎太郎)


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